国賠支援の会設立にあたって

 

私の息子原田信助(当時25歳)は、平成211210日午後11時頃、帰宅のため、

新宿駅構内を通行中に、見知らぬ男性らから、突然階段から引き落とされ、暴行を振るわれました。

駆けつけた駅員からも暴行を受け、息子は、何とか抵抗して体制を反転し、「今、暴行を受けている」と、携帯電話から110番通報しました。

ところが、新宿駅西口交番から駆けつけた警察官に無理やり連行されたのは息子の方でした。

「任意同行」と称されて、交番に連行された後拘束され、私に電話をすることも許可して頂けませんでした。そして、「あなたは被害者なんだから、署に行って、刑事さんに話さなければいけない」と、騙されて、パトカーで新宿警察署に連行されました。

 

息子は、新宿署の刑事に、「痴漢容疑の取調べだ」と言われて、初めて自分に痴漢の容疑がかけられていることを知りました。

息子は、自分が一方的に暴行を受けた被害者であることを説明しましたが、3人の刑事はメモでさえ取ろうとしませんでした。

翌朝まで一方的に自白を迫る取調べが続き、「原田さん、もう帰っていいですから」とやすひら刑事に言われたのは朝の4時頃でした。

次に新宿署に行くときは、被害届を出すことになったものの、やすひら刑事の「お互いに訴えあえ」「証人として、(暴行を振るった)駅員さんの話を聞く」等の言葉に打ちのめされ、また長時間の取調べのため、心身ともに疲れ果て、自殺に追い込まれました。

 

さらに警察は、亡くなった信助を、痴漢の被疑者と認定して書類送検し、一方で、息子が必死で訴え続けていた暴行事件については、捜査を行わないまま、書類送検も行わず、事件として終わらせてしまいました。

 

私がその夜、息子の身に何が起きたのかを詳しく知ることができたのは、息子が英会話の勉強のために持ち歩いていたボイスレコーダーを、私に残してくれていたからです。

新宿西口交番と新宿警察署の取調べの一部始終を録音した息子のボイスレコーダーには、突然の暴行によって傷ついた身体の手当てもされず、自分は110番通報した被害者だと説明しても、訴えを取り上げず、電話も許されず、身に覚えのない痴漢の被疑者として一方的に追及され、どんどん衰弱していく息子の声が収められています。

 

息子の人生は、希望に向かって歩み始めたばかりでした。息子は意志の強い努力家で、JAXAに入る時には、一日15時間も勉強していたことを、親友の方から教えて頂きました。

息子がいなくなり、初めてむすこの部屋に入りましたら、部屋中本がいっぱいで、資格試験の参考書が積まれていました。事件の前月には情報処理技術者の資格も取得していました。他にもまだまだ人生で挑戦したいことが沢山ありましたし、「将来、早稲田大学に奨学金をつくりたい」などの夢もありました。

 

昨年の1227日の警視庁通信指令本部の証拠保全の検証において、「お腹を触られた」被害を申告した女性が、事件の翌朝430分前には、「(息子は)人違いだった」と証言していた事実が明らかになりました。

人違いであることが判っていながら、49日後に、息子を、「東京都迷惑防止条例の被疑者」と認定して、書類送致した新宿署の行為は、犯罪と言わざるを得ません。

人間として、親として許すことはできません。

 

この度、国賠を提訴したのは、息子の名誉の回復のためと、この国の警察の捜査によって、息子のような被害者を二度と出してはいけないという願いからです。

 

息子の事件が報道されてから、沢山の方々にご支援を頂きました。

代表の清水勉先生を始めとする弁護団の先生方、後援会代表の岡村遼司先生、荒川区議の

小坂英二先生、「市民の目フォーラム北海道 代表」原田宏二氏、HPを起ち上げて頂いた

支援者の方には、本当に感謝しております。

息子の友人の方々、事件をご登載くださったメディアの方々、報道を通じて事件を知り、

ご支援を始めてくださった皆様に心より御礼申し上げます。

息子の名誉の回復のみならず、今後同じ冤罪事件が起こらないためにも、頑張ってまいります。

これからも皆様のご支援を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。

 

原田尚美

 

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